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IPO初値上昇率(吸収金額別)

IPO投資の常套文句に、"リスク無しに儲かる"類のキャッチコピーがありますが、IPOに限らず投資を新規に始められる方には、ややミスリードのような気がします。

リスクのない投資は存在しませんので、"リスク無しで確実に儲かる"おいしい儲け話の多くは、詐欺まがいのものが多いと感じます。

ところが、IPO当選&初値売りに関して言えば、検証としてIPO好況期(2004年〜2006年前半)の初値実績を使えば、

346社中 336勝 3敗 7引き分け
公募割れ確率は1%、公募価格同値を含めても3%

ですから、「IPOは97%儲かる」、「(ほとんど)リスク無しに確実に儲かる」という言葉も条件付きながら間違いではないように思えます。

しかし、これにはいくつかの統計のトリックが隠されています。

統計のトリック1

公平を期すため、IPO好況期だけでなく冬の時代を含む長期(過去6年間)の実績で見ると
  • 84% 792社 初値上昇!(初値売なら利益確定。保有し続ければ?)
  •  4%   39社 初値が公募価格と同値(手数料分は負け)
  • 11% 105社 初値が公募価格割れ
ですから、勝率84% 平均初値上昇率76.4%と、"リスク無し"とまでは言えないですがそれでもまだ信じられないほど有利な投資に見えます。
(現物株であれば、勝率84%や平均株価上昇率76.4%は、"神"の領域です)

統計のトリック2

お気づきと思いますが、勝率84%や平均初値上昇率76.4%は社数ベースです。

社数ベースでの勝率や初値上昇率の数字は、公開株数666,613,000枚のあおぞら銀行(公募割れ-13%)も、1000枚のeBASE(+543%)も同じ1社としての扱われます。

統計として間違っていなくても、IPO投資を経験されていらっしゃる方にとっては、実際の感覚やご自身の投資実績とは、だいぶ異なるのではないでしょうか。

例えば、市場吸収金額が70億円以上のIPOは社数で10.3%の構成比ですが、IPO枚数で76.6%、吸収金額では78.4%となります。

個人投資家が実際に当選した(する)IPOは、社数ベースではなく、IPO枚数や市場からの吸収金額の構成比に近くなります。

公募割れ不安の大きいばらまきIPOを遠慮する方も多いので、銘柄を気にしないで普通に抽選参加していると、当選する8割は吸収金額70億円以上の大型IPOになります。

2006年公募割れIPOは年間で11%(社数)ですが、実際の結果は、

今年は、A級,B級IPOがひとつずつとばらまき銘柄10枚当選。複数枚ゲットしたあおぞらとSRIスポーツの公募割れが痛かった...前半の貯金のおかげで、IPOは今年も100万くらい儲かったので、2007年こそは目標200万!

といった状況の方も多かったのではないでしょうか。

銘柄選択を気にせず、どのIPOにも複数の証券会社から抽選参加すると、当選IPO枚数は1年で簡単に2桁に乗りますが、結構な確率で公募割れIPOも引き当ててしまいます。

いわゆる「大型IPO」,「ばらまき銘柄」,「全プレ」系IPOの公募割れ確率は、11%より高いのです。

また、同じIPOでもあおぞら銀行,野村不動産ホールディングスや出光興産クラスと、新興市場の公開株数1000〜2500枚のIPOでは、初値上昇率の傾向が全く異なることもお感じだと思います。

具体的に吸収金額とIPO初値上昇率の相関関係を確認するために、2001年〜2006年上場936社を、超大型,大型,中型,小型,超小型IPOと5種類に分けて、具体的に数字で検証した結果の表です。

サイズ  IPO市場吸収金額    初値    IPO社数    IPO枚数        市場吸収金額
                     上昇率       構成比  (万枚) 構成比   (億円)  構成比
--------------------------------- --------- --------------- --------------- -------------------
超大型 1000億以上       15.4%    16  1.7%   849 43.1%  28353 48.7%
大型   70億〜1000億未満  17.4%   80  8.5%   661 33.6%  17299 29.7%
中型   30億以上〜70億未満 39.1%  108 11.5%  147  7.5%     4731  8.1%
小型   13億以上〜30億未満 69.8%  230 24.6%  169  8.6%     4551  7.8%
超小型 13億未満          98.9%  502 53.6%  144  7.3%     3320  5.7%
--------------------------------- --------- --------------- --------------- -------------------
                     76.4%  936 (100%) 1971 (100%) 58255 (100%)

吸収金額1000億以上の超大型IPOは、社数ベースで1.7%とごくわずかですが、枚数ベースでは43.1%,金額ベースでは48.7%と50%近くにもなります。

社数的には年3社程度の超大型IPOが、実質的にはIPO市場の半分を占めていることになります。

特に2006年は、あおぞら銀行,野村不動産ホールディングス,アコーディアゴルフ,出光興産の4社が、10/3〜11/14の超短期間に集中しました。(11月7日上場のタカタも984億とほとんど超大型なので、6週間で実質5社!)

吸収金額1000億以上の超大型IPOの平均初値上昇率(2001-2005年)は、400億〜1000億クラスのIPOよりも安定的に好成績で+20%ありました。

そのためでしょうか、あおぞら銀行のブックビルディング期間でも、東証一部IPO神話とか1000億以上のIPOは割れないとか言われていました。

2006年の超大型IPOは、地合いの悪さと需給の悪化から、

10/3   野村不動産ホールディングス +11%
10/24  出光興産              +11%
11/1   アコーディア・ゴルフ         -4%
11/7   タカタ                   1%
11/14  あおぞら銀行            -13%

と、見事に後半ほど苦戦しました。

個人的には、あおぞら銀行とアコーディアゴルフの主幹事を務めたゴールドマンサックスのスタンス(良く言えば見事なファンドの出口戦略、悪く言えば日本人をはめ込んだ外資の益出し)も一因かと思うのですが、想像の域を出ません。

IPO市場吸収金額70億〜1000億未満の大型IPOは、社数ベースで8.5%とわずかですが、枚数ベースでは33.6%,金額ベース29.7%と実質30%前後にもなります。

平均初値上昇率(2001-2006年)は17.4%でしたから、仮条件の想定ディスカウント範囲程度で、大型IPOには過去からIPOプレミアはついていなかったと考えられます。

超大型と大型IPO合計では、社数ベースで10.3%ですが、枚数ベースで76.6%,金額で78.4%と約8割を占めます。

10社に1社程度の市場吸収金額70億以上のIPOが、実質的には市場の8割(→当たりくじの8割)を占め、期待初値上昇率が16%程度であると言うことから、作戦の一つが導かれます。

作戦1
  • 市場吸収金額70億以上のIPOでは、慎重な銘柄選択の上、公募割れ不安が
  • 小さく、そこそこの初値上昇率が期待できる銘柄は複数枚数ゲットして
  • コツコツ利益を積み上げる。
  • 地合いが悪い場合はより慎重に銘柄選択を行い、最悪公募割れになった

場合でも、塩漬けにせず早めにロスカットを行う。

吸収金額や公開枚数が少ないIPOの初値は、いわゆる"需給相場"によりIPOプレミアが付く事が多くあり、最もIPO(同時に短期トレーダーの方々にとってはセカンダリー投資)の醍醐味が味わえます。

IPO市場吸収金額  初値上昇率
中型   30億以上〜70億未満  39.1%
小型   13億以上〜30億未満  69.8%
超小型 13億未満          98.9%

吸収金額70億未満のIPOは社数ベースでは89.7%ですが、枚数で23.4%,金額で21.6%と狭き門です。

小型や超小型IPOは、世間でIPOは何十回申し込んでも当たらないといわれる所以の銘柄群で、配分枚数の70%程度を持つ主幹事口座ですら当選確率1%程度はざら、平幹事や委託販売だと当選確率0.1%以下も珍しくありません。

しかし、必要な証券会社20-30社の口座とIPO用資金200万以上用意でき、手間暇を惜しまなければ、年に2-3回当選することは、実は難しいことではありません。

当選できないのは、

  • 落選が続き、当選する前に諦めて抽選参加を止めてしまった
  • 口座数が足りなすぎる (本当の資産家であれば口座数は関係無しですが..)
  • 資金が少なすぎる (50万以下では運頼みです。)
  • IPO当選ノウハウが不足
  • 資金移動や抽選参加,情報収集の手間暇を惜しんで、当選確率の高い証券会社での抽選参加を逃してしまっている
のいずれかに当てはまってしまっているのではないでしょうか。

作戦2
市場吸収金額70億未満のIPOは、当選すると信じてひたすら抽選参加を続ける。
  • 必要十分な証券口座を開設
  • 前受金用にできるだけ資金を用意する (消費者金融は避けましょう)
  • 金融機関や証券会社、IPO情報に通じる
  • 抽選参加や資金移動の手間暇を惜しまない
  • 銘柄別に当選確率の高い証券会社への申込みははずさない
  • 確率は低くても公募割れ銘柄はあるので、銘柄選択は必ず行う
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IPOデータ分析

データはあらゆる投資判断のために有用です。IPO投資においても公募価格,初値,上場社数,市場など参考になる情報が豊富にありますので、分析して銘柄の見極めに活用しましょう。

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